八目迷先生の小説「夏へのトンネル、さよならの出口」からこの「時と四季シリーズ」の作品についてもっと知りたいと思った私。
時と四季シリーズの秋、「琥珀の秋、0秒の旅」を今回読み終わったので考察と解説について紹介していきます。
すでに読み終わっている前提のネタバレありでの考察となります。
登場人物の背景
麦野カヤト
本作主人公、高校生。不登校気味で周囲と接するのが苦手。
自分でもそれをわかっているので改善しようと努力する様子も描かれている。
井熊あきら
旅の相方。不良女子高生。というのは名ばかりで、根は優しい。
全体の印象
テーマが「停止」ということで、時間停止した世界で旅をする少し変わった物語。「刻々」を思い出すような世界観でした。
作中は2人で旅をするのだが、旅を共にし恋仲に・・ということはあまりなく、初対面で印象最悪の状態でスタートする。どちらかというと終盤でも旅のパートナーとしての印象がお互いに強い。
つい他の「時と四季シリーズ」と比較しがちだが、琥珀の秋については、完全に恋仲ということがないので常に新鮮な気持ちで「この2人くっついて終わるの?くっつかないの?」と先が気になってどんどん読めてしまうそんな作品でした。
トリガーの疑問
時間停止のトリガーが「絶望」と「希望」。
1週目読んだ段階で少し疑問に思った部分をメモとして記載。
2週目を読みながらこのレビューを書き、疑問点に向き合いながら考察していきます。
最大の疑問は「希望」。
第一章
第一章については、時間停止から2人で旅をすると決めるシーンまでが描かれています。
前振りが非常に短く、時間停止までが早かった印象。
時間停止後2人は出会うのですが、この時点での2人の心情をまとめます。
麦野カヤト:「友達を突き飛ばしてしまった罪悪感」「時間停止の原因究明」
井熊あきら:「家族との今後」「突き飛ばした男性の安否」「男性への恐怖心」「時間停止の原因」「麦野が安全か見定める」
主人公視点で描かれていた上に井熊の当日の状況はあとから説明されるので2回目読んだ時に「そういうことか」となった方は多いはず。
井熊をただの不良だと思ってしまった自分に少し反省。まさに読者が主人公の心情となる。
「麦野は男が好きなのかも」という確信に近い部分を目撃したのもあり、この人は安全と決め、一緒に旅をすると決めたのでしょう。(実際は勘違いでしたが)
麦野自身の心情がトリガーとなっているので井熊が時間停止に巻き込まれた理由などは明かされませんでしたが、同じ場所、同じ時間で「絶望」を感じたことが巻き込まれた理由だと思っています。
2週目読んでいて気付きましたが、暮彦おじさんは1回目の停止の際に麦野が瞬間移動して自分のアパートにきているのでこの現象には確信ではないですが察しがついていたのでしょう。本人に身をもって体験していると回想で伝えていることからも「この事実に気付いている」ということを匂わせています。
暮彦おじさん自身も体験し、かつ麦野自身も体験している。さらには麦野がもう一度「停止」を体験する可能性も込めてあえて一言匂わせたような言い方をしたのだと思います。
この「体験」をしたら、自分のところに答えがある。彼はそう言いたかったのでしょう。
「自分が亡くなったこと」「北海道で停止現象」この2つに関しては暮彦おじさん本人からすると予想外だと思いますが、結果的におじさんのアパートに向かう旅があの匂わせていた発言から決定するので本人の考え通りに事が進んでいますね。
(2)へ続く