広告 夏へのトンネル 小説

【ネタバレあり】「夏へのトンネル、さよならの出口」映画版を考察・解説レビュー(4)。【夏トン】

父親の再婚相手を紹介するシーン

このシーンは見る人によって捉え方や心境の変化が大きく変わります。

一般的な捉え方。

父親が毒親。自分勝手。

このように見せています。

ですが、近しい人や身内が亡くなったことの経験がある方、この父親の再出発の考え、全てではなくても一部共感してしまった方もいるはず・・。

そう、塔野の父親は毒親かもしれませんが、先を見据えて前に進んでいるんです。

近しい人の「死」を乗り越えたことのある方だからこそ共感できてしまう・・毒親なのになぜ共感してしまったのか・・そう思った方、原作の最終話に答えがあります。

 

花城のメール

心情がぐちゃぐちゃになっている状態で花城からのメール。

塔野にとって花城は心のありか。

弱ったとき困ったときに必ず居る存在へと変わっています。

 

喫茶店へ

花城が自分に担当者がつくかも?という報告を塔野にするシーン。

言うならば漫画家への第一歩の報告。

この時点で塔野は「自分1人で行くしかない」という決断に至ります。

もちろん、花火の時点でも決めていたはずですが、ここで確定されます。

「花城には漫画家になってもらいたい」

という気持ちが強く現れたのでしょう。

重要なのは、花城がなぜこれを塔野に話したのか。

 

「漫画家になれるかもと嬉しい報告」

「ウラシマトンネルに入るなと言って欲しい」

「ウラシマトンネルに一緒に来てくれと言って欲しい」

 

これらの感情がまとまらなくて自分では決断できなくなっていたのかな・・と考察。

さらに声がかかったことにより自分の「才能」に無意識のうちに気付いてしまい、ウラシマトンネルに入る理由すら見失いつつあったのでしょう。

結論を塔野に決めさせる選択をしてしまった。

ここで塔野の最後の嘘、延期という選択。

メールでも綴られている通り、彼にはもう1人でウラシマトンネルに入る選択肢しか残されていなかったのでしょう。

「失ったものを取り戻せる」ということに気付いたあとで、

「自分のせいで花城が漫画家になれるチャンスを逃す可能性」「父親の再婚と引っ越し」

この2つの理由が彼を1人で行かせる選択の後押しとなってしまいます。

ここでの考察として、ウラシマトンネルそのものは最初から塔野1人を見つけて「彼1人をカレンの元へ」という結論に達していたと推測しています。

「花城」はウラシマトンネルにとって言ってしまえば部外者。彼を最後に1人で行かせるようにウラシマトンネルが導いていた可能性も捨てきれないと思っています。

 

戻る者と進む者

花城が向かった時には既に塔野はトンネルの中へ。

電車で異変に気付いた時の花城の表情が辛すぎて見ていられません。

トンネル前まで向かい、メールが届く。

ここで答え合わせの時間。でも花城からすれば理由など不要、塔野さえいればよかった。

もちろん、ここでウラシマトンネルに入る選択肢もあったと思います。ここ、辛い選択でしたよね。自分なら塔野を追ってそのままトンネル入る・・。って思ってしまった方大勢いるはず・・。

ですが、彼が望んだのは漫画家を目指して欲しいという願い。

自分の目的と塔野の願いに答える為、花城は漫画家を目指し進みます。

 

カレンと再会

ウラシマトンネルに入った塔野がカレンと出会うシーン。

「幻覚」「現実」「記憶」「夢」

このカレンがどれなのかは、なんとも判断できない部分。

塔野が子供の姿になっていたので記憶という考えが正しいのかと思いつつ・・ウラシマトンネルの中では記憶の中から具現化され実体を持つ?これは結論を出さない方がいいのか・・。(原作ではウラシマトンネル内の自宅で準備するシーンがあるので実体がある?インコやサンダルと一緒??と深く考えさえられるシーン)

ここでカレンと出会ったことで自分が進むべき道をはっきりと認識し、花城に会うため現実へ戻る決心をします。

 

8年

塔野がトンネルに入り8年。花城は漫画家となり、連載した漫画は連載終了するほどの時間が経っていました。

少し色褪せてしまったガラケーをいつまでも持って、塔野の帰りを待っているようでした。

傘のシーン自体は映画オリジナル。傘の錆がどれほど年月が経ったのかを演出している。

この後、スランプに陥った花城。細かいですが、ボードのネタ帳?の枚数も少なくなっています。

 

駅で泣いてしまうシーン。

強かった花城が泣くシーンは、心打たれます。

ここでガラケーの着信音。

走り出す花城。

映画を見ていた時は気付きませんでしたが、コンテ集を見た時に細かい演出がされていることに気付かされました。

塔野と花城、2人の話なのでこういった場面で「会いに行ってこい」と後押しするものが映画にはいません。でも実際は後押しされていたんですね。

 

再会とラストシーン

トンネル内で再会。

この時点で塔野17歳。花城は25歳。8歳差です。歳の差ではなく8年も待たされるのは辛い・・。

トンネルを出た時点で13年経過。2人以外の同級生は30歳ということになります。

映画はここで傘を開いて2人で共に歩む決心をしたのでした。

ここでタイトル。そしてED「フィナーレ。」は反則ですよね、余韻に浸りすぎて13年経過する勢いです。

 

まとめ

今回は、映画版「夏へのトンネル、さよならの出口」のネタバレあり考察レビューを各シーンごとに紹介していきました。

序盤でもお伝えしましたが、私自身この作品ともっと早くから出会っていればと何度も思いました。

映画をこれほど繰り返しみたことはありません。探究心が止まらない作品ですね。

飛行機雲は2人の距離感か!教室にずっと寝てる奴いる!とか見れば見るほど新しい発見できる、そんな作品です。

感情的にどんどんレビューを書いた部分もあり、ところどころお粗末な文章となっていますが最後まで考察レビューを読んでいただいたことに感謝します。

もう少しこの作品の余韻に浸りながら、次は八目迷さんの「ミモザの告白」を読んでみようかな・・そう思う私です。

 

 

 

この物語には続きがある

映画だけを見た方、この物語には続きがあります。

ここからはネタバレではないので、映画しか見ていない方は参考にどうぞ。

 

小説原作

原作では、ウラシマトンネルを出て終わり・・。

ではなく、ウラシマトンネルを出た数日後まで描かれています。

気になる方は、ぜひ読んでみてください。

 

コミック版

タイトルは「夏へのトンネル、さよならの出口 群青」。

こちらは原作を漫画で読むことができます。原作のラストまでしっかり描かれているので原作背景などを深く知りたい方は読むことをおすすめします。

よりこの作品を好きになれるとともに、塔野と花城の話を何度でも繰り返し読めてしまうほど綺麗な作画となっています。(花城の照れるシーンが見れるだけでも購入する価値あり)

DMMブックスなら電子版を90%OFFで購入でき、いつでもスマホで読めるのでおすすめです。

【漫画版】「夏へのトンネル、さよならの出口」を読む

 

さよならのあと、いつもへの入り口

ウラシマトンネルを出た1年後の2人の様子が描かれています。

映画の特典として入手できた小説ですが、今では「原本」については入手できません。

そのかわり、ブルーレイ豪華版に収録されている「特製ブックレット」の中に、さよならのあと、いつもへの入り口が収録されており、豪華版購入者は後日談を読むことができます。

ブルーレイ豪華版の詳細は下記から確認できます。

 

Blu-ray豪華版

ブルーレイ豪華版には、ディスク以外に「本編全コンテ集」と「特製ブックレット」が収録されています。

中身のページについては著作権の関係上公開しませんが、

「本編全コンテ集」には文字通り映画のコンテを全て見ることができるので映画自体を1冊の漫画感覚で読むことができます。さらに映画で都合上カットとなったシーンを見ることができるので「この場面はこんな思いで作られていたのか」と映画の細かいところまで見ることができます。

「特製ブックレット」には、後日談「さよならのあと、いつもへの入り口」が収録されているほか、映画のワンシーンや編集前のシーン、さらにはこの映画に関わった方のインタビューを見ることができます。

こちらの詳細レビューについては後日紹介予定です。

 

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